運営主体: 大阪市社会福祉協議会 地域福祉課権利擁護担当
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よくある質問

ここでは、成年後見制度の「申立てにあたって」、また、申立て後、後見人等に「選任されたら」、及び「後見事務の終了時」について、よくある質問をまとめています。ご親族で成年後見制度の利用をお考えの方、すでにご親族が後見人、保佐人、補助人となられている場合にも参考にしていただけます。

※「後見人」「後見人等」の表記について
法定後見には「後見」「保佐」「補助」の3類型があり、後見人、保佐人、補助人はそれぞれ、「代理することができる行為」に違いがありますが、ここでは、主に「後見人」について、記載しています。「後見人等」と表記されている場合は、後見人、保佐人、補助人を総称しています。

後見人等に関する内容は、後見人に関する内容は
事例についてはで色分けしています。

申立てにあたって

  • 選任までの期間

    後見人等が選任されるまでの期間はどれぐらいでしょうか。
    必要な書類がすべて整っている標準的なケースで、かつ調査等に困難がなければ、申立てから1~2か月程度で審判が出ます。鑑定を行う場合は、そのための期間分だけさらに延びます。
  • 申立費用

    申立てに必要な費用はどれぐらいでしょうか。誰が負担するのでしょうか。
    収入印紙代、郵便切手、鑑定費用

    収入印紙(申立手数料)

    後見・保佐・補助開始 800円
    保佐人・補助人の同意行為の定め 800円
    保佐人・補助人への代理権付与 800円

    郵便切手

    成年後見  3,990円分(内訳:500円×2枚、100円×15枚、
    84円×10枚、63円×5枚、20円×10枚、10円×10枚、5円×5枚、1円×10枚)
    保佐・補助 4,990円分(内訳:上記に500円×2枚を追加)
    ※候補者が1人増すごとに500円×2枚を追加

    収入印紙(後見登記手数料) 2,600円

    精神鑑定の費用

    ご本人の精神の状況について鑑定を行う場合があり、その場合には10万円程度の鑑定費用がかかります。
    ※その他、診断書や戸籍謄本・住民票等の取得に費用がかかります。

    申立人が負担するのが原則となっています。ただし、申立手数料、送達・送付費用、後見登記手数料、鑑定費用について、ご本人の負担とする上申をすることができます。

  • 申立費用

    生活保護を受給している本人の後見等開始の申立てを予定していますが、申立費用を負担するだけの資力がない場合どうすればよいですか。
    申立費用の負担が困難な場合、日本司法支援センター(法テラス)の扶助制度の利用が考えられます。また、市町村によっては、申立費用の助成を行っているところもありますので、お住まいの自治体の窓口にお問い合わせください。(大阪市では申立費用の助成は行っていません。)
  • 申立手続の依頼

    成年後見の申立てをしたいのですが、申立手続を依頼できるところはあるでしょうか。
    申立手続の代理を弁護士に依頼したり、申立書の作成を司法書士等に依頼することはできます。各専門職の相談窓口にお問い合わせください。
  • 後見人等の
    要否の判断

    母は認知症ですが、私はまだ後見人等をつけるような状況ではないと思っています。しかし、支援に関わっている人たちは「後見人等が必要だ」と言います。後見人等が必要かどうかはどのようにして判断されるのでしょうか。
    成年後見制度は、認知症、知的障がい、精神障がい、発達障がいなどによって物事を判断する能力が十分ではない人が対象となります。お母様がそのような状況にあるかどうかは、まず医師の診断を受けてみるとよいでしょう。
  • 申立てに関する
    本人の意思

    後見等の開始にあたって、本人の意思は確認されるのでしょうか。
    後見開始に当たっては、本人の自己決定権の尊重や手続保障の考えから、本人が申立人である場合を除き、後見を開始することや後見人の選任等について、原則として本人の意見を聴かなければならないとされています。保佐開始や補助開始に当たっては、本人が申立人である場合を除き、保佐・補助の開始や保佐人・補助人の選任等について、本人の意見を聴かなければならないこととされているうえ、以下の申立てが同時になされた場合には、本人の同意が必要となります。

    (保佐の場合)保佐人に対する代理権付与(本人が請求した場合を除く。)

    (補助の場合)補助開始、補助人に対する同意権付与、補助人に対する代理権付与(本人が請求した場合を除く。)

  • 申立てに関する
    親族の意思

    母が認知症です。娘である私が母について後見等開始の申立てを行うことを考えていますが、私の姉が反対していても申立てをすることはできますか。
    後見等開始の申立てには、ご本人の子が同意していることは要件となっていません。申立人において、お母様に後見人等が必要な状態であるとお考えであれば、他の親族が反対していても申立てをすることはできます。
  • 親族意見書

    親族の意見書について、書いてもらうことが難しい親族がいる場合はどうしたらよいでしょうか。
    意見書を提出する親族は、ご本人の配偶者及び子(子がいない場合は、ご本人の親や兄弟姉妹などの推定相続人)ですが、提出できない方がいる場合には、裁判所からその理由を尋ねられる場合があります。
  • 後見人等候補者

    母の認知症が進んできたので後見等開始の申立てをして、子である私が後見人等になりたいのですが可能でしょうか。
    申立書に、後見人等候補者の記載欄がありますので、同欄に記入してください。ただし、候補者が挙げられている場合であっても、裁判所は、その事案にふさわしいと思われる人を後見人等に選任しますので、候補者が希望どおりに選任されるとは限りません。事案の内容によっては、弁護士、司法書士、社会福祉士などの専門職が選任されることもあります。その場合は、通常、後見人等の報酬が発生しますが、報酬は本人の財産から支払われることになります。
  • 後見人等候補者

    姉が重度の認知症です。妹である私が成年後見の申立てを行うつもりですが、私自身が後見人等にならないといけないのでしょうか。
    相談者自身が後見人等に必ずなる必要はありません。裁判所に第三者(弁護士、司法書士、社会福祉士などの専門職)を選任してもらうこともできます。
    なお、専門職が選任された場合は、通常、後見人等の報酬が発生しますが、その報酬はご本人の財産から支払われることになります。
  • 後見人等がついた
    ときの職務内容

    一人暮らしをしている母を訪ねると、色んなところから請求書や督促状が届いていました。母は認知症がありよく考えずに通販で物を買ったりしているようです。後見人がついたらどのように対応してもらえますか。
    後見人が選任されると、本人の財産や負債の調査を行い、負債については借入先や金額を調査して、支払方法等を検討することになります。必要に応じて、後見人から弁護士等に負債の整理を依頼することもできます。
    なお、後見人が就任した後の通販での買い物等については、後見人が取り消すこともできます。なお、クーリングオフについては、こちらを参照してください。
  • 後見人等がついた
    ときの職務内容

    入院中の精神障がいのある人の後見等開始の申立てを予定しています。本人は退院後一人暮らしをする予定ですが、後見人等は賃貸アパートを借りるときの連帯保証人になってくれますか。
    後見人等は、ご本人の財産管理や身上保護を職務とし、ご本人に代わって法律行為(契約等)を行いますが、アパート賃借時や入院、施設入所の保証人になることは後見人等の職務ではありません。
  • 後見人等がついた
    ときの職務内容

    支援している高齢者の施設入所にあたり「身元引受人が必要」と言われました。後見人等をつけると身元引受人になってもらえますか。
    後見人等は、ご本人の財産管理や身上保護を職務とし、ご本人に代わって法律行為(契約等)を行いますが、施設入所や入院時の身元引受人になることは後見人等の職務ではありません。
  • 後見等開始審判
    への不服申立

    私の兄が、認知症のある母の後見等開始の申立てをしましたが、私は母に後見人等がつくことに反対なので、後見等開始の審判後に不服を申し立てることはできますか。
    裁判所が後見等開始の審判をしたときは、4親等内の親族は、その審判に対して、お母様に審判書謄本が送達されてから2週間以内に不服申立て(即時抗告)を行うことができます。なお、後見人等の選任について、不服申立てはできません。
  • 後見監督人

    「後見監督人」とは何をする人ですか。
    監督人の主な職務は、後見人が行う事務の監督であり、監督人は、後見人に対し、後見事務の報告や財産目録の提出を求めるほか、必要に応じて、後見事務等について調査を行うことができます(民法863条)。監督人がどのように監督するかについては監督人の裁量に委ねられていますが、一般的には、3、4か月に1回程度、財産や収支の状況を中心とした後見事務について確認をするために報告を求められることが多いと思われます。また、監督人には弁護士や司法書士等の法律の専門職で裁判所が適当と認めた人が選任されることになるため、後見事務をする上で困ったことや分からないことがあれば、随時相談することができます。
    さらに、ご本人が後見人とともに遺産を相続する場合など、後見人とご本人の利益が相反する場合には、監督人が選任されていなければ特別代理人を選任する必要がありますが、監督人が選任されていれば、監督人がご本人に代わって遺産分割協議等をすることになります。
  • 総合支援型
    後見監督人

    「総合支援型後見監督人」とは何をする人ですか
    初めて後見人となられた親族後見人の後見活動全般について、監督を行うほか日々の後見活動について指導・助言・相談対応を行い、親族後見人を総合的に支援する後見監督人のことで、弁護士・司法書士・社会福祉士といった専門職が家庭裁判所により選任されます。
    後見人は、この後見監督人に対して、定期的に後見事務に関する報告などをするだけではなく、日々の後見活動において生じた悩みや疑問を相談したり、後見活動の具体的な方法に関する助言や報告書類のサポートを受けたりすることができます。
    後見監督人が就任する期間は、後見人が一人で適切に後見活動を行えるようになるまでの概ね9カ月程度となっています。ただし、家庭裁判所がもう少し支援が必要であると判断した場合や、本人が解決に専門性を要する課題を抱えている場合は、後見監督人が就任し続ける場合があります。
    後見監督人には、家庭裁判所が報酬額を決定し、本人の財産から報酬を支払うことになります。この報酬は、後見監督人から支援を受け、適切な後見活動が行えるようになり本人の権利擁護が図られるために必要な費用です。
    【従来型の監督人との違い】
    ・財産管理だけでなく身上保護や意思決定支援を含む後見活動全般について助言・相談対応を行う。
    ・一定期間を経て親族後見人が後見活動をできるようになれば、監督人は辞任します。
    (引用:家庭裁判所HPより)
  • 後見制度
    支援信託

    「後見制度支援信託」とはどのようなものですか。
    後見制度による支援を受けるご本人の財産のうち、日常的な支払をするのに必要十分な金銭を預貯金等として後見人が管理し、通常使用しない金銭を信託銀行等に信託する仕組みのことです。成年後見において利用することができます(保佐や補助、任意後見においては利用できません。)。後見制度支援信託を利用すると、信託財産を払い戻したり、信託契約を解約したりするにはあらかじめ裁判所が発行する指示書が必要になります。この仕組みを利用することで、ご本人の財産をより適切に管理することができ、後見人にとっても、財産管理の負担が軽減されるメリットがあります。
  • 後見制度
    支援預貯金

    「後見制度支援預貯金」とはどのようなものですか。
    後見制度による支援を受けるご本人の財産のうち、日常的な支払をするのに必要十分な金銭を預貯金等として後見人が管理し、通常使用しない金銭を銀行や信用金庫、信用組合等に特別な預貯金として預託する仕組みのことです。成年後見において利用することができます。後見制度支援預貯金を利用すると、支援預貯金口座からの入出金を行ったり、口座を解約したりするにはあらかじめ裁判所が発行する指示書が必要になります(一部の金融機関では追加入金について指示書が不要な場合もあります。)。この仕組みを利用することで、ご本人の財産をより適切に管理することができ、後見人にとっても、財産管理の負担が軽減されるメリットがあります。
  • 取下げ

    成年後見制度を十分に理解せずに申立てをしてしまったので、一旦、申立てを取り下げたいのですがどうすればいいですか。
    後見等開始の申立ては、裁判所の許可がなければ取り下げることはできません。なお、審判後は、申立ての取り下げはできません。
  • その他

    遺産分割協議にあたり、相続人の一人に精神障がいのため意思能力が不十分な方がいます。どのような対応をすればよいでしょうか。
    現状では、遺産分割協議を進めることは難しく、分割後の財産管理等の必要も考えられることから、成年後見制度を利用することが考えられます。

選任されたら

  • 登記事項証明書

    後見人等であることを証明する場合に、提示すべき書類は何でしょうか。また、その書類はどのような方法で取得するのでしょうか。
    裁判所より後見人等に選任されると、東京法務局に備えられた「後見登記ファイル」にその旨の記録がされることとなります。自分が後見人等であることを証明するには、この「後見登記ファイル」に基づいて発行される成年後見登記用の「登記事項証明書」を提示することになります。東京法務局に宛てて郵送請求するか、あるいは大阪法務局本庁では窓口で取得できます。
    なお、審判確定後、成年後見登記の手続が完了するまでの間は、裁判所が発行する審判書謄本と審判確定証明書で登記事項証明書に代えられる場合があります。この場合、審判書謄本はすでに裁判所から郵送されており、お手元にあります。審判確定証明書は、裁判所に交付申請を行う必要がありますが、実際に手続をする金融機関や役所で、審判書謄本と確定証明書で足りるかどうかについてご確認の上、審判確定証明書の交付を申請するようにしてください。
  • 選任直後

    後見人に選任されたら、まずどのようなことをしなくてはなりませんか。
    後見人に選任された審判が確定したら、着手しなくてはならないことは次のとおりです。
    登記事項証明書の取得、金融機関への届出等、行政機関への届出、財産調査、ご本人の支援計画等、裁判所への報告(財産目録、収支予定表、通帳の写し等の資料等の提出)
  • 選任直後

    金融機関に対して後見人に就任したことを届けるためには、どのような書類が必要になるでしょうか。
    各金融機関には、それぞれ所定の届出用紙があります。それに必要事項を記入し、次の添付書類とともに提出します。まずは、当該金融機関に問い合わせてみましょう。
    ①登記事項証明書、②後見人の本人確認のための身分証明書、③後見人の届出印
    ※金融機関によっては、後見人の実印と印鑑証明書を求めるところがあります。
  • 選任直後

    後見人に就任した場合、行政機関などにどのような届出が必要ですか。
    届出が必要な主なものとして、年金、国民健康保険や後期高齢者医療、介護保険、自立支援給付・医療、各種税金などがあります。
    まず、年金については、後見人の住所に年金振込通知書等の送付先を変更することができます。届出先は、年金事務所です。(一部の国民年金は、区役所が窓口になります。)
    国民健康保険後期高齢者医療、介護保険(第1号被保険者)、自立支援給付・医療などについては、ご本人の住所地の区役所・区保健福祉センターの担当窓口ごとに、後見人の就任と送付先変更の届出をします。その際、登記事項証明書(もしくは審判書謄本及び確定証明書)を添付することになります。後見人の本人確認資料(運転免許証やパスポートなど)や認印も持参してください。
    固定資産税や市府民税は、市税事務所に届出をしておけば、税金の納付書も転送してもらえます。
  • 財産管理

    私は後見人ですが、既存の本人名義の口座をそのまま使って後見業務をすることはできるでしょうか。
    後見人は、ご本人に関する包括的な代理権をもっていますから、当然に、既存(既に存在する)のご本人名義の銀行口座をそのまま使って出入金などの取引をすることができます。
    金融機関に後見人就任の届け出をすれば、各金融機関においては、各預金口座の出入金、解約、変更について後見人の代理権が登録され、以後は、後見人として、ご本人の預貯金の出入金が全てできるようになります。
  • 財産管理

    後見人にとって便利の良い金融機関で、新規に口座を開設することは可能でしょうか。
    原則として、後見人は、従来、ご本人が開設していた金融機関の預金口座を使って預金の管理をすべきです。ただし、日常的な預金の出し入れが極めて不便であるなど、適切な後見業務に支障がある場合は、後見人もしくはご本人の居所の近くで、新しい預金口座を開設することも認められます。
    その際の預金口座の名義は、後見人個人や親族の名義にはしないでください。ご本人名義とするか、「●●(ご本人氏名)後見人▲▲(後見人氏名)」という名義にすることになります。
  • 財産管理

    後見人が本人の財産からお金を借りることができますか。
    本人財産からの借入れは原則として認められません。後で発覚した場合には、「不正な行為」として後見人を解任されることがあります(民法846条)。
  • 財産管理

    私は夫の後見人ですが、夫婦二人の生活費を本人の預金から支出できますか。
    後見人自身の生活費は、後見人の財産からまかなうのが原則です。しかし、ご本人に相談者を扶養する義務がある場合(相談者に収入や財産がなかったり少なかったりする場合など)には、社会通念上相当な生活費をご本人の財産から支出することができます。なお、後見人の職務一般について、こちらも参照してください。
  • 後見人の職務

    後見人は、後見事務を行うに当たり、裁量を有しているということですが、それはどういう意味ですか。後見人は、自分の思いどおりに後見事務を行っても構わないという意味でしょうか。 ※(参考)「裁量」について 東京家裁のHPから後見センターレポート
    ・Vol16
    https://www.courts.go.jp/tokyo-f/
    vc-files/tokyo-f/file/
    kouken_report_vol16.pdf

    ・Vol23
    https://www.courts.go.jp/tokyo-f/
    vc-files/tokyo-f/R0207kouken/
    kouken_report_vol.23.pdf
    後見人は、ご本人の財産管理や身上保護に関する事務を行うにあたって、法律の規定等に従うほか、ご本人の意思、心身の状態、生活の状況等を踏まえて、ご本人の利益となるように具体的な事務の内容を決定する義務を負っています。(民法858条)
    実際に後見事務をするに当たり、本人の利益となり得る方法は一つだけとは限りませんが、この義務を前提とすると、どの方法を選ぶかは、基本的に後見人が責任を持って判断することになります。その意味で、後見人には、どの方法を選ぶかの「裁量」があるということができます。しかしながら、その「裁量」の範囲は無制限ではありません。後見人は、ご本人の利益になるように事務を行う必要がありますから、いつでも、自分の思いどおりに後見事務を行ってもいいというわけではありません。後見人の判断について、ご本人の利益にならないと裁判所に判断されるような場合は「裁量の範囲外である」として是正を求められ、場合によっては後見人を解任されたり、責任を追及されることもあります。
    なお、「裁量」の範囲は、一律に定まるものではなく、それぞれの事案の個別具体的な事情により異なってきます。後見人がしようとしていること(方針)が後見人の「裁量」の範囲内にあるかどうかがどうしても判断できない場合は、その方針を「連絡票」に具体的に記載する形で、裁判所に連絡をすることもできます。裁判所への連絡に関しては、後見人に選任された時に、裁判所が交付している「成年後見人・保佐人・補助人ハンドブック」に詳細が記載されていますので確認してください。
  • 後見人の職務

    後見人等としての事務を行うにあたっての基本的な心構えについて教えてください。
    後見人等は、ご本人に対して意思尊重義務と身上配慮義務を負っており(民法858条、876条の5第1項、876条の10第1項)、ご本人の身上面に配慮して事務を行う必要があります。特に、ご本人の判断能力の如何に関わらず、できる限り、ご本人が自らの価値観等に基づいて意思決定できるよう、ご本人を支援する「意思決定支援」は、ご本人を中心とした適切な後見事務を行っていくうえで常に念頭に置いておくことが大切です。(『意思決定支援を踏まえた後見事務のガイドライン』(2020年10月30日、意思決定支援ワーキング・グループ)が公表されていますので、参照してください)
  • 後見人の職務

    居宅介護サービス契約、施設入所契約、通院治療のための医療契約、入院契約等について、後見人はどのような役割を果たすのでしょうか。
    ご本人にとって、必要な契約なのか、必要な契約であれば、どの事業所、施設、病院が適切なのかを検討する必要があります。
    特に施設は、ご本人にとって終の棲家になることもあるため、ご本人の意向はもちろん、これまでの生活状況や支援者の意見なども参考に、ご本人にとって安心できる環境であるかが重要となります。
    可能であればご本人と一緒に見学したり、ご本人に体験入所をしてもらうなどして本人の感想や意見を聞いてみたり、気になることについては、契約時に質問したり、契約書・重要事項にその点が記載されているのかを確認することも大切なことといえます。
    医療機関については、生命の安全が最優先されるため主治医の意見などを参考にしましょう。
  • 後見人の職務

    本人が訪問販売により不要な物品を購入したり、住宅改修をした場合は、後見人としてどのように対処すべきでしょうか。
    業者からクーリングオフの説明を記載した書面を受け取った日から8日後(商品により期間が異なるので確認してください)までであれば、クーリングオフによる無条件解約(特定商取引法)が活用できないか検討します。クーリングオフ期間を過ぎていた場合には、業者に本人の判断能力の程度等を説明して、契約の解消を求めるなどの対応を行い、それでも解決しないときは取消権を行使することを検討します。
    取消権を行使する場合は、取引をした業者に対し(ローン契約がある場合は信販会社に対しても)取引の日時、場所、対象となる商品、金額等を記載したうえ、後見人として取消権を行使する旨を記載して内容証明郵便で発送します。
  • 後見人の職務

    本人が店舗等に出かけて不要な物品を購入した場合は、後見人としてどのように対応すべきでしょうか。
    ご本人が自ら店に出向いて購入した物品が、「日常生活上の行為」(民法9条但書)である場合には、取消しができません。何が「日常生活上の行為」であるかは、ご本人の生活状況等に照らして具体的に検討するしかありませんが、一般的に日常生活に通常使用する種類と量のものかどうかで判断します。食品・飲料・嗜好品や下着などの衣類、日用品などが主なものです。
  • 職務にかかる費用

    後見人等が、本人の資産から支出できる後見事務の費用にはどのようなものがあるのでしょうか。
    後見人等がその職務を行っていくうえで必要な経費は、ご本人の財産から支出してもかまいません。
    ただし、これらについても、支出の必要性、ご本人の財産の総額等に照らして相当な範囲に限られます。ご本人との面会や金融機関に行くための交通費、裁判所に報告をするための通信費、財産の収支を記録するために必要な文房具、コピー代などは通常、必要な経費に含まれます。なお、交通費は原則として電車・バス等の公共交通機関の料金に限られ、高額なタクシー代等については、特別の事情がない限り認められていません。
  • 住居の解約

    本人が施設に入居することになりました。今、住んでいる賃貸住宅を解約するにあたって注意すべき点はありますか。
    ご本人の居住用不動産について賃貸借契約を解除するためには裁判所の許可が必要です(民法859条の3)。これに反した処分は無効となります。
    解約に至る事情を詳しく記載して、裁判所に居住用不動産処分許可を求める申立書を提出します。申立てには申立手数料(収入印紙)を納める他、郵便切手の予納が必要です。また、賃貸借契約書等の写しを資料として添付することが求められます。
    なお、ご本人の居住用不動産について、売却、賃貸、抵当権の設定、贈与、使用貸借等を行う場合にも、裁判所の許可が必要です。
  • 利益相反

    本人と後見人が利益相反の関係であるとは、どのような場合を指すのでしょうか。
    「利益相反」とは、ある法律行為が形式的に、後見人には利益となり、ご本人には不利益となるおそれのあることをいうとされています。
    具体的には、次のような場合が例として考えられます。

    ア 後見人がご本人を代理して、後見人自身と契約をすること。たとえば、ご本人の土地を後見人が買う、後見人の家をご本人に貸す、などです。ただし、後見人からご本人への贈与など一方的にご本人の利益になる場合は含まれません。

    イ 後見人とご本人が、亡くなった方の共同相続人である場合に、ご本人のみが相続放棄をしたり、遺産分割協議でご本人を代理して合意をすること。

    ウ 後見人の借り入れについて、ご本人を連帯保証人にしたり、ご本人の土地を担保に提供すること。

  • 遺産分割

    父の後見人をしています。先日、母が亡くなりました。母の遺産分割協議をするにはどうしたらよいでしょうか。
    この場合に遺産分割を行うとすると、ご本人(父)と後見人とは、どちらか一方が有利になると、他方が損をするという、利益相反の関係になります。この場合、裁判所に特別代理人選任の申立てをして、選任された特別代理人がご本人を代理して、後見人を含む相続人との間で遺産分割協議をすることになります。ただし、監督人等が選任されている場合は、監督人等がご本人を代理することになるため、特別代理人選任の申立ては不要です。
  • 報酬

    親族が後見人等である場合であっても報酬をもらえますか。
    親族の後見人等も、申立てにより、裁判所の決定で、ご本人の財産から報酬を受け取ることができます。
    後見人等の報酬額は報酬付与の申立てに基づいて裁判所が決定します。裁判所の許可を得ることなく、ご本人の財産から差し引くことはできません。勝手に差し引いた場合は、ご本人の財産に戻してもらう必要があります。それに応じない場合は、後見人等を解任される可能性もあります。
  • 家裁への報告

    後見人等は選任後、裁判所に定期的に報告をする必要があるでしょうか。また、定期的な報告以外にも必要な報告はありますか。
    裁判所に対する報告には、次の4種類があります。

    ①初回報告(財産目録、収支予定表等)

    ②後見事務の報告

    ③ご本人の居所の変更や、ご本人の資産に大きな変動が生じたときの報告

    ④ご本人が死亡した際の報告

    このなかで定期報告は②となり、裁判所から報告時期の指示があります。 このほか、後見人等やご本人が転居した場合や、氏名、本籍の変更が生じた場合は、裁判所に連絡をするとともに、東京法務局で変更登記の手続を行う必要があります。
  • 記録の閲覧

    専門職とともに、父の後見人に選任されていますが他方の後見人(専門職)が父の財産を全く教えてくれません。職責を果たしているかを確認するために、他方の後見人(専門職)が裁判所に提出している書面を見たいのですが、どうしたらよいでしょうか。
    基本的には、もう一人の後見人(専門職)と話し合うことが良いと思われますが、どうしても裁判所に提出した書面を開示してくれない場合には、裁判所へ後見等事務報告書の閲覧・謄写申請をして、裁判所の許可を得たうえで、これを確認する方法が考えられます。
  • 後見人交代

    私は障がいのある息子の後見人に選任されていますが、高齢のため、後見人を本人の妹に交代できないでしょうか?
    裁判所に後見人辞任許可の申立てを行ってください。病気や高齢等の正当な事由があれば、辞任は許可されます。辞任により後見人がいなくなる場合には、後見人辞任許可の申立てと同時に後見人選任の申立てを行ってください。後見人候補者がいる場合は申立書に記載してください。ただし、後見人は裁判所がその事案にふさわしいと思われる人を選任しますので、候補者が必ず選任されるとは限りません。
  • 解任申立と
    即時抗告

    父の後見人に専門職が選任されていますが、後見事務が不適切なので裁判所へ後見人の解任を申し立てましたが却下されました。さらに何か方法はありますか。
    後見人の解任申立てが却下された場合には、申立人は、告知を受けた日から2週間以内に不服申立て(即時抗告)することができます。
  • 能力回復による
    審判取消

    私には精神障がいがあり、後見人がついています。後見人がお金を管理し、毎月生活費等をもらっています。最近は状態が良くなってきて薬を飲まなくてもよい状態になってきていますが、後見人に辞めてもらうにはどうしたらいいでしょうか。
    後見開始審判の取消しの審判を申し立てる必要があります。後見開始の審判は、ご本人が能力を回復したと判断された場合には取り消されます。まずは、後見人の支援を受けなくてもよい状態になっているかどうかについて医師の診断を受けてみましょう。
  • 解任

    後見人等が裁判所に解任される理由とはどのようなものがあるのでしょうか。
    不正な行為、著しい不品行その他後見人等の任務に適さない事由がその理由にあたります。例えば、財産管理における説明のつかない支出や、ご本人の不利益になるような行為が行われたことが理由となります。定期報告書などを提出後、その事実が発覚する場合や、関係者から裁判所へ情報提供がなされることで発覚する場合があります。
    日頃から、活動(支払を含む)毎に記録を残すように心がけると良いでしょう。その際に収支を合わすことも習慣づけておくとよいでしょう。

後見事務の終了時

  • 死後事務

    本人が死亡した場合、後見人等としてどのような対応が必要でしょうか。
    ご本人の死亡により後見等は終了します。
    まずは死亡診断書のコピーまたは戸籍(除籍)謄本のコピーを添付して2週間以内に裁判所に死亡の連絡をしてください。
    また、後見人等が相続人でない場合又は財産管理権を有さない後見人等が相続人である場合は、原則2か月以内に管理の計算を行い最終の収支報告と財産の明細をまとめ、裁判所に報告してください。報告終了後、相続人に財産を引き継いでください。
    後見人等が相続人であるか否かに関わらず、別途、東京法務局に後見等終了の登記を申請してください。
    なお、後見監督人が選任されている場合には、監督人にも死亡の事実を伝えてください。
  • 法定後見の終了

    父が認知症のため定期預金の解約ができず、娘である私が後見人になりましたが、定期預金を解約さえできればそれ以外のことは親族として対応できそうなので、定期預金解約後に後見を終了させることはできますか。
    後見開始の審判後は、ご本人の判断能力が回復して後見開始の審判が取り消されるか、ご本人が死亡するまで、終了できません。
  • 法定後見の終了

    法定後見が終了する理由には、どのようなものがあるのでしょうか。
    後見等の終了には、①ご本人の死亡により終了する場合と、②ご本人の判断能力の回復により、家庭裁判所が請求を受け、後見等開始の審判を取り消し、ご本人にその審判が告知されたことで終了する場合があります。
    後見人等の任務の終了という点では、①、②に加え、③後見人等の辞任や解任といった場合、④後見人等に欠格事由が発生した場合となります。
    ただし、ご本人に対しては、その必要性がある限り、辞任する後見人等が新たな後見人等選任の申立てをする、裁判所が職権で後任の後見人等を選任するなどの対応がとられるため、後見人等が不在のままとなることはありません。